俺がいなくなった途端、チームは突然勝ち始めた。

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「それじゃ、そろそろお仕事行ってくるね」 月曜日。今日は1軍2軍ともに移動日で試合ないデーな1日だったのだが、関西弁コーチトレでしごきにしごかれ、いつもの2割り増しでみのりんのご飯を頂いてしまった。 そして夜9時半を過ぎる頃、みのりんが仕事に出るための身支度をし始めた。 俺も一緒に立ち上がり、いつもは自分の部屋に戻るのだが、今日の俺は違う。 「山吹さん。仕事場まで送っていくよ。もうこんな時間だし」 「えっ?」 「あ、嫌だった?」 「ううん。そんなことない」 「じゃあ、一緒に行こう」 「うん」 俺達の住む場所からみのりんの仕事場である工場までは、歩いて10分ほどだが、時間が時間なので、食後の散歩がてらに送っていこうと思い付いたのだ。 マンションの裏から公園の横の道をテクテクテクテク。 時折外灯があるだけの道を歩いていく。 「山吹さんは、工場で何を作ってるの?」 「今はケーキかな。ずっとホールケーキにクリームを絞ってるの」 「へー、そうなんだ」 「今度新井くんにもケーキ作ってあげるね。誕生日いつ? 選手名鑑に新井くんいないから、分からなくて」 「そーだ、そーだった! 選手名鑑に俺のこと載せ忘れやがって!出版社に電話しようと思ってたんだ! 思い出しちゃったよ!」 「………それで、新井くんの誕生日はいつ……?」 「ちきしょう。明日になったら朝一で電話しよ! 失礼しちゃうわ! こちとられっきとした野球選手なのに!」 「………聞いてない」
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