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「オッケー、ナイスボール、ナイスボール!」
相手キャッチャーはちょっとしめしめといった感じでピッチャーにさっさとボールを投げ返す。
その後ろでは、キャッチャーと同じマスク越しだが、主審は俺のことを軽く睨み付けていた。
「なんだね、新井くん。判定に不満かね?」
判定に対する俺の反応が気に食わなかったようで、そんな言葉を浴びせられる。
「いえ、特には」
今のストライクかよ! 最後までちゃんとコースを見てくれよと言いたくなったが、ポニテちゃんの放漫な谷間を思い出しながら、そんな気持ちを中和した。
今のがストライクだったら、バッターの平均打率が2分は下がりますよ。ますます投高打低の野球になって、お客さん減りますよ。お客さん減ったら、審判チームもいろいろ困りますよ。
そのくらいのボール球だったのは間違いない。
しかし、さすがに40打席近くヒットが出てないとなると、いよいよコーチおじさん達に怒られそうな気がする。
足取り重くベンチに引き返すその途中、打席に向かう阿久津さんとすれ違った時……。
「今の球、よくバット止まったな」
阿久津はバットをにぎにぎしながらそう呟いた。
「ストライク、バッターアウト!」
最後は同じボールを阿久津も豪快に空振り三振して、ちょっと気が楽になったのは内緒だ。
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