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振り返ると、肩に掛けたバッグがずり落ちないように押さえながら、笑顔を振り撒きつつ、ポニテちゃんは俺の元まで駆け寄ってきた。
10日ほど前に、ひったくりに遭遇した時の既視感。今度はその教訓からか、彼女は歩道側の肩にバッグを掛けている。
「新井さん、お疲れ様です! また会っちゃいましたね!今日は移動日でしたよね」
「ああ、ビクトリーズスタジアムでちょっと練習しようと思ったんだけど、若手の選手がいっぱいいるから、君は帰ってゆっくり休んでくれって新しくきた打撃コーチに言われちゃってさ」
「何言ってるんですか。新井さんもまだまだ若手じゃないですか!」
「俺も思った」
「新しくきたコーチって、佐鳥コーチですよね」
「そうそう。よく知ってるね」
「ビクトリーズのことは常に勉強していますから。ニヒヒヒヒ」
ポニテちゃんはそう言って、大陽を眩しそうにしながら目を細めて笑った。あまりにも無邪気なので、頭をなでなでしてあげようとしたのだが、すぐ近くを警官が通ったので止めておいた。
「さやかちゃんは、お出かけかい?」
「はい。実は今から、専門学校にお金を支払いに行くところなんですよ!」
「そうなんだ。振り込みじゃなくて、直接お金を持って行くの?」
「はい、実際に学校まで歩いてみたくて」
「へー。じゃあ、俺も一緒に着いていっていい?」
俺がそう聞いてみると………。
「はい、もちろん!」
彼女の表情が2割増しでさらに明るくなった。
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