ヒットが出ない新井さん。

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早くきた1人目、2人目、3人目と事務所の中に入っては出て行く。 「山名さーん。山名さやかさーん」 呼びにきたのは、パーマのかかったおばさまではなく、その方よりも若い30歳くらいのスーツ姿の女性。用紙と運転免許証と印鑑を持ったポニテちゃんが立ち上がり、ちょっと緊張した面持ちで事務所に入っていった。 俺はその間にもやってきた入学者達の案内を勝手に行った。並べたパイプ椅子に、その入学者達を順番ごとに座ってもらい、近くにあったパンフレットなどを渡して待ってもらっていた。 そんなことをしていると、手続きを終えたポニテちゃんが領収書を手に事務所から出てきた。 「おっ、さやかちゃん。終わった?」 「はい、終わりました。お待たせしてすみません」 「なあに、いいってことよ。お金はちゃんと支払えたのかい?」 「はい、滞りなく」 「そのお金、ちゃんと事務員さんが金庫に入れるところまで見届けた?」 「え?」 「ほら、持っていこうとすれば持っていけちゃうじゃない。ちゃんと鍵付きの金庫に入れてくれたか確認しないと」 「変なこと言わないで下さいよ。それより、お腹すきましたよね」 「ほんとだ。もうお昼だね。どっかでご飯食べに行こうか」 「はい!」 「何、食べたい?」 「なんでもいいですよ!」 「顔にお寿司って書いてあるけど」 「どうして分かったんですか?」 「4割打者だからね」 「今は0割打者じゃないですか」 「君にも言われるとは」
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