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不遇とも言える高校時代には、春先にチームを二分して行う紅白戦ですらも、ある時から俺はマウンドにも、バッターボックスにも立たせてもらう事は出来ない。
赤組の先発は同学年のエースが務め、白組には1つ下の期待されていた後輩ピッチャーが上がる。
俺はその2人のピッチングをジャッジする主審の役目を買って出るしかなく、2人の出来がよければ、本当に出番なく、紅白戦が終わる事もある。
しかし、主審として何百球という投球をジャッジするわけだが、ほとんどミスらしいミスもない完璧なジャッジだと、毎回自画自賛している。
ボールを見る目にも多少の自信があった。
調子がいいときには、ピッチャーがボールを放した瞬間に、どの球種がどの辺りコースに来るのか、それがストライクなのかボールなのか、簡単に予測出来る気がしたくらいだ。
他の部員達は入部したての1年生でも、それぞれ最低限の出場機会をもらっているが。
俺は1打席も、1球さえも出番なく、紅白戦が終われば、審判の防具とマスクを外して、グラウンド整備に混ざる。
今日は3安打して満足しただとか、上手くダブルプレーを取れたとか。
仲間達はそんな話をしながら楽しげにトンボを持ち、グラウンドをならす。
俺は土日の練習の度に朝早くから準備をして弁当を持たせてくれる母親に申し訳なく思いながら、夕日を背中にグラウンド整備をしていた。
その時に食べる弁当は、心なしかいつもより冷たい気がしたものだ。
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