4割打者の新井さん

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130キロのゲージを出て、一息着こうと向かった自販機の側にそのポスターが貼られていた。 それを目にした瞬間、胸を突き動かされたような。脳みそを突き抜かれたような感覚を覚えた。 生まれて初めての感覚。 俺は自身がばらまいたバッティングセンターのプレイコインにも気付かず、夢中でポスターの詳細を凝視していた。 「おめえも知っているだろう。この新球団をよ」 肩にドスンと重たい衝撃。バッティングセンターの店主がタバコふかしながらやってきた。 「知ってっか? この前のドラフトと拾った自由契約の奴を合わせてもまだ支配下の選手は50にも満たねえ。このトライアウトはチャンスあるぜ。ま、おめえはには無理か。しかし、18から28までなら自由参加だ。試しに受けたらどうだ? もしかしたらがあるかもよ? がっはっはっは!!」 店主は高笑いをしながら、床に落ちたコインを俺の胸ポケットに放り込みながら、大きくあくびをし、タバコを消して立ち去る。 北関東ビクトリーズの入団テストか。 ものは試しだ。参加してみるかな。 自分の夢がなんだったのか確認する最後のチャンスになるかもしれない。
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