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「那須塩原の新井さんね。はいよ。ゼッケン着けてグラウンド入って」
11月中旬。
日本シリーズが終わり、プロ野球の1シーズンが終わりを迎えた頃、寒空が広がる宇都宮の郊外にある野球場へと足を踏み入れた。
準備期間は僅か3週間。
バイト先に無理を言って、まとまった休みをもらい、近所の高校に出向いて、顔見知り程度の野球部の監督さんに頭を下げて練習に混ぜてもらった。
そのお陰で、人の投げる球を打つ感覚を養い、ノックも沢山受け、体も鍛え直し、実践的なカンも取り戻しつつあった。
正直なところ、もう少し時間は欲しかったけど、出来る事はやった。
新しいスパイクも買ったし、バットも振り込んだ。
練習が進み、近所の高校球児達と同じようにユニフォームを泥だらけにしていると、本気でトライアウトに挑もうとしている自分がいることに驚いた。
きれいに整備された見知らぬグラウンドを見渡して、全く名前も知らない近くにいた独立リーグのチームと思われるユニフォームを着た選手と早速キャッチボールを始めた。
集合時間には早いせいか他の選手はあまり集まってはいないようだ。
出来る事ならあまり沢山の人が来ませんようにと願いながら、俺はキャッチボールで肩をならしていた。
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