1945年 4月29日 シュレジエン地方

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「ロッテ・・・早く・・・。」 ハンスは振り向くと、妹のロッテをせかすように言った。 「待って、お兄ちゃん・・・。」 ロシア軍の砲撃で地面はまるで地震の様に震え、辺りは爆発音と人々の悲鳴と怨嗟の声で満ちていた・・・。 地面が震える度に、小さなロッテはしゃがみこみ両手で耳を押さえた。 ハンスはその度にロッテの手を取って立ち上がらせると、その小さな手を握った。 お父様・・・お母様・・・主よ・・・どうか僕とロッテを守ってください・・・。 ハンスは埃で汚れたロッテの顔を汚れたハンカチで拭った。 ロッテは頷くとハンスの手をギュッと握り返した。 辺りは、死が横行していた。 死んだ人・・・人・・・人・・・放り出された荷物・・・彷徨う馬や牛・・・。 そして、ただ呆然と虚空を見つめる路傍の人々・・・。
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