strawberry 歩

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 そうじゃなきゃこんなイイ女とこんな状況になんか絶対ならないだろうし。俺は顔も悪くないと思う、分かっているだろうけど性別は♀だ。だけど女にしか興味がない。 最近やっと理解者が増えてきた、性同一性障(トランス)ってヤツ。 周りは知ってる奴ばかりだ。 そんな俺の事はどーでもいいけど、何がどうなって今、俺にミカと呼ばれているこの美女が抱き着いているかと言うと… 本気で千鳥足の彼女がなんとか壁を伝いながら化粧室に入って言ったんだけど、出てきてドアを離した瞬間よろめいたのを抱き抱えたのが始まりだった。 「大丈夫ですか?歩けます?」 そう尋ねても返事とは全然違う言葉が返ってくる。 「んー?あっ!こないだからバイトに入った子でしょー?可愛い顔してるのね?ねぇお姉さん送ってくれない?」 その言葉に 送って の意味が、カウンターまでじゃあない事ぐらい分かっているけど何よりも本気でそんな事を言っているのか…。 その後もグッタリしている彼女を これはダメだと思ってどうするかを店長に尋ねるとまだ営業時間の為、店長は抜けられないし、バイトの俺が送って行くしかない状況になった訳で… 店長から家もだいたい聞いて無理矢理タクシーの運転手に場所を告げさせて一緒に乗り込んだが最後抱き着かれたまま寝てしまっている。 家の前についてゆすり起こしても無駄なようなので、とりあえず脱力した重たい彼女を抱えて玄関を開けてベッドに降ろした瞬間抱き着かれた、反動で俺が押し倒したような体制になった。 酔っ払ってはいるこの女、だけど…はっきり言ってモデルのような体型なのに大きな胸が俺に押し潰される。  柔らかい髪が鼻をくすぐりスラリとした腕は首に巻き付いていてかなり男?心をくすぐられる、このどうしようもない体制のままいる訳にはいかないけど、欲望のまま突っ走ろうにも理性が邪魔をする、取りあえず唇だけ重ねて帰ろうか…なんてヨコシマな考えの元、唇を近づけてしまえば重なるのは簡単で、一度重ねてしまえば、帰りたくなくなってしまった…。 で…結局同じベッドで寝てしまった訳で。 彼女が起きる前には帰らないと学校に間に合わないし…なんて翌朝制服に着替えていた所で彼女は目を覚ました状況だ。 まぁ…俺の責任じゃあないが、バツが悪い…。 無言が続く火曜日の朝の出来事。
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