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少年の向かっている先には何やら騒がしい集団がいるようで、その声は辺りに響き渡っていた。
まったくな近所迷惑である。
「暴れんなって、アル!」
「だーっ!!離せぇっ!!」
「誰かアルをとめろー!」
暴れくるう一人の少年を、周りの者たちが必死に押さえていた。けれども少年の力は人並みより強く、大勢でかかってやっとといった状態である。
少年にはやらなけれはわならないことがあったのだ。…というより、やりたいことがあったといった方が正しいかもしれないが。
「気持ちは私たちにだって分かるわ。でもその情報が確かか分からないでしょう?」
そう言う女の顔は悲しみと諦めに満ちていた。
「なぁアル、今までユリゾンの情報はあったけど、全部駄目たったろ?何度でも一緒なんだよ。」
「…」
ーーユリゾン。自分をすくってくれた恩人。
姿を消してゆくえの分からない彼に会えるものなら会いたい。と、ここに居る誰もがそうおもっていることだろう。
けれど今までに彼を目撃したとの情報はいくつかあったが、会うことは出来なかった。だから、今度も会えないかもしれないと、失望することを恐れているのだ。
それが普通だ。
けれど、少年の諦めの悪さはここで大いに発揮される。
「俺は少しでも希望があるんならそれに賭けたいから。」
少年の鋭くて真っ直ぐな瞳が、その言葉の真剣さを語っていた。
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