現実

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◇ 慎也さんは午前は寝ていることが多いと言っていたから、翌日昼を過ぎた頃、腕時計を持ってアパートを出た。 いまだかつて慎也さんの家へ行ったことはない。 だからいまいち場所もわからない。 本当は連絡してから行こうかなと思ったけれど、吃驚させたくてそれはやめておいた。 たまには自然体の慎也さんを見てみたいというのもあった。 少し前に配られた名簿に掲載してあった住所を手帳にメモして、それをたよりにバスに乗る。 しばらく走ると、見たこともない景色が広がってきた。 あたしが住んでいる住宅街とは違って、ショッピングモールがあったりいくつものオシャレな飲食店が立ち並んでいたり、物凄く発展した街だとわかる。 それからすぐにバスを降りて辺りを見渡す。 ここが慎也さんが住んでいる街だと思うと、自然と頬が緩んできた。
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