夢うつつ

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「はぁー」 と小さく溜め息をついて、止めていた足をエレベーターに向けて歩き始めようとしたとき、 「やめた方がいいよ」 「え」 その声の方を振り返って、そういえばここに和泉さんがいたんだ……ということを思い出した。 言いたいことはなんとなく勘づいていたから聞きたくなくて、またくるりと方向転換して足を進めた。 「課長はやめておいた方がいい」 けれど、決定的な一言が飛んできて、足を止めた。 やっぱりこの腕時計が慎也さんのものだと気付いていたのだ。 と思うと同時に、昨日あんな光景を見てしまったから、和泉さんの言葉の意味は理解できた。 けれどあたしの中ではいまだにその事実がちゃんと処理できていない。 だから、その言葉に頷くことができなかった。 そしてそのまま足を進めたあたしに、それ以上は何も言ってこなかった。
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