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見ると、門扉の向こう側に一台のバイクが止まっている。あのバイクは見た事がある。男友達がカタログを見ながらはしゃいでいたのを覚えている。確か、馬力がとても強いのだったか。
仕方ないのでヘルメットを被り、シートの後ろ側に跨がる。前の慧の腰に手を回して、しっかりと繋ぐ。
「それじゃあ、今から全部教えてくれる人のところに連れて行くけど、その後何が起きても後悔しないこと。咲ちゃんが選んだのはそういう道だから」
上等だ。咲としては疑問が解消されればそれでいいのだ。その後に何が起ころうが構わない。
「それじゃあ、行くよ!しっかり捕まっててね!」
バオン!!という凄まじいエンジン音とともにバイクが発進したところで咲は気づいた。
明日も学校があるということに。
***
二、三時間ほどバイクで走っただろうか。着いたのは町外れにある廃工場だ。当然、咲の住んでいる街からは遠く離れている。一体、ここに何の用があるのだろう?
「こっちだよ」
そう言うと慧は咲の腕を掴んで、工場のほうへ引っ張っていく。
「ちょっと、ここに何の用なの?」
「言っただろ。全部教えてくれる人のところに連れて行くって」
工場の近くまで歩いて、止まる。目の前には物々しい鉄扉。慧は扉の横にあるパネルへと手を伸ばす。なぜ廃工場にあんなものがあるのだろう?
慧はパネルを四回ほど圧すと、懐から一枚のカードを取り出し、パネルの横のスリットへ滑り込ませる。するとピー、という電子音とともに鉄扉がゆっくりと左右に開いていく。
そこにあったのは箱状の空間。まるでエレベーターのようだ。
慧は素早くその中に身体をおさめると、咲に向かって手招きをしてきた。咲にも入れ、ということなのだろう。
潔くエレベーター(?)の中に入り、慧がエレベーターの中のパネルを圧す。するとガコン!という音がなり、エレベーターの扉が閉まっていく。
さらに慧がパネルを操作すると、エレベーターが動き始めた。感覚からいって、どうやら下へと向かっているらしい。
「…………」
「…………」
静寂がきつい。何か話さなくては。
そう思った矢先、慧が口を開いた。
「……ついたよ」
次の瞬間、エレベーターの動きが止まり、扉が開く。
そして咲の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。
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