鳴かぬ蛍は身を焦がす

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「大丈夫か?」 部屋着に着替えを済ませてからマメを心配して洗面所に入って鏡の前に立つマメの背後に立つ。 タオルで色の変わった腕の部分を拭きながら、鏡越しに俺を見て笑う。 「シミになるかなぁ」 「洗えよ、帰るまでに乾くだろ」 あいつの着ていたワンピースの左の袖はびっしょり濡れていた。 「お前、風邪ひくぞ。服なら貸してやるから、着替えろよ」 腰を屈めて、小柄なマメの肩に顔を乗せて耳元に唇を寄せる。 「…ほら、脱げよ。そんなに濡れてちゃ冷たいだろ?」 男女の友情なんて、嘘だ。 再会した俺たちは惹かれ合う気持ちを抑えられなかった。 それまでの自分にとって大切だった人を傷つけた。 足りない何かを互いで補うように、求める衝動を堪え切れない。 「…や、ぁ。……だめ」 鏡の中のマメはダメだなんて思ってやしない。 「ん?……いいじゃん」 なぁ、マメ。
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