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「じゃあ、おいで」
イタズラっぽく見つめる慎ちゃんに手を引き寄せられて膝の上に座った。
「久しぶり、真亜子」
「…うん」
恥ずかしがる私を面白がってるの?会社なのに、こんな至近距離…。
視線の中に彼の唇を捉えれば、胸が締め付けられる。上半身を90度捻って、首に腕を絡ませて…甘えたい衝動をグッと抑えて下唇を噛んだ。
視線を合わせられない私はネクタイの結び目と柔らかな唇をチラチラ見るだけ。絡めた指先で遊ぶ彼は年上の余裕…
幾つかに仕切られた打ち合わせルーム。この4畳程の部屋は、カタログやサンプルが所狭しと置かれている。
会社じゃなかったらいいのに。
甘えたい気持ちと裏腹に、部屋に誰かが来たら…と落ち着かない。
座り心地の悪さに、無意識に息を吐き出したら、お腹に回る慎ちゃんの腕に力が入って更に俯いて自分の靴の先を見つめた。
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