10/14
前へ
/567ページ
次へ
「車は綺麗になるからな」 モリはそう言って少し離れてどこかに電話し始めた。 買い物袋をぶら下げてモリの通話が終わるのを待つ。明るすぎる照明に照らされて、明日からどうしようかと思い悩む。 暫くは電車通勤かぁ… 車は通勤にしか使わない。自宅から距離があるだけに明日からの通勤に気が重くなってくる。 モリはまだ話中で、私に背を向けたままだ。ずっと外にいて身体もお総菜もすっかり冷えてしまって、食べる気も無くなってきた。 ため息をついて無惨な愛車を見つめた。 「マメ、大丈夫か?」 立ち尽くす私に携帯電話を閉じながら近寄ってきたモリ。 「うん、大丈夫だよ」 素直にモリがいてくれて良かった…と感謝の思いで微笑んだ。 「タクシー呼んだから… 俺、まだここにいなきゃいけないんだ。明日には代車渡せると思うから、詳しく判ったら携帯に連絡するよ」 モリに背中を押されて、パーキングの外に出た。
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2238人が本棚に入れています
本棚に追加