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そっと私の左手がモリの手と触れる。顔見知りとは言え、その距離とモリの手の温もりに思わず肩をビクつかせた。
「ナニ…これ」
手の中にはママの味。
「分けてやるよ、俺の幸せ」
自信満々に笑うモリ。
「歯にくっつくから、要らない」
サラっと触れられてモリに男を意識してしまって、恥ずかしさを隠したくてモリを睨んだ。
「バカだなぁ~
大人はくっつかない様に食うんだよ、ガキ。
車ぶつけられると、ヘコむだろ?
俺は幸せが多いから、可哀想なお前に分けてやるんだよ。」
「あんた、どんな女を相手にしてるの…」
呆れた私をモリは可笑しそうに笑って、ハザードランプを点けて止まったタクシーに私を押し込んだ。
「ハイハイ。
時間、遅くなったけどゆっくり休めよ。あ、領収書貰っといて…」
モリはあはははと声を出して笑って、またなと軽く右手を上げた。
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