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もぉ、ダメ。
私、どうにかなりそう…
「し、慎ちゃん…」
慎ちゃんは私の上擦った声に口元を緩めて、ポンと背中を叩いた。
「さ、もう行きな…」
「はい…」
膝から離れて打合せの資料を並べれば、慎ちゃんはシルバーフレームのメガネを掛けて、何事もなかったように資料を見ていた。
その横顔を見つめて、何だか泣きそうになって思わず顔をしかめた。
「真亜子、どうした?」
首を傾げて心配そうに私を見る慎ちゃんに呟いた。
「週末…会いたい」
私の小さな呟きにクスクスと笑って、傾けた頭の後ろを掻く。
「わかったよ」
顔を上げて私を見てくれる慎ちゃんの顔は照れていた。
色白の慎ちゃんの顔が少し赤い。
冷静な彼が時に見せる表情にまた恋している自分がいる。
しばらく見つめ合えば、さっきまで尖らせた唇が満足して緩んだ。
「お待たせしました」
バッと部屋のドアが開くと営業担当が工務部の人と一緒に部屋に入ってきて、私は部屋を出た。
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