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 定時でデスクを後にした水曜日。 賑わう更衣室で着替えを済ませて、コートとバックを取り出した時だった。 「だって…ネクタイをプレゼントするのって"貴方に首ったけ"って意味なんだもん~」 更衣室ではしゃぐ誰かの会話を聞いた。 …ソレ。本当?! ロッカーの扉に手を添えて、鼓動が速まる気がしていた。口許が緩む私はそっと更衣室を出た。 腕時計をチラリと見て、足早に会社のエントランスを抜ける。焦る気持ちが駐車場までの数十メートルの距離を駆けさせた。 息を整えて車のエンジンを掛ける。フロントガラスを照らす夕焼けが眩しくて目を細めた。 デパートが閉店するまで残された時間は僅か1時間弱。それでも、どうしても今日買いたかった。 買い物や待ち合わせの人たちで賑わう市内のデパートの裏手にあるパーキングに車を停めた。
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