手紙

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「おーい…まだ準備出来ないのか?」 「ちょっと待ってよ!お兄ちゃん」 犬養健治は妹の後ろ姿を見ながら呆れかえった。 ―なんで女はこう…いろいろ時間がかかるんだ? 買い物もそう!出かけるのもそう!学校へ行くのだって!― 「先に行くぞ!」 健治はイライラしながらそういうと 「でーきた♪いこ?お兄ちゃん!」 と言って妹は笑顔で近づいて肩を叩く。 「いつもいつも遅いんだよ!お前は」 そう言って前を歩く妹を健治はジッと睨む。 「いいじゃん!女はいろいろ準備が必要なの!」 振り返った妹は人差し指をたて、上目遣いで言ってきた。 健治は妹のそんな姿を可愛いと思いながら、なにも言えずにいる。それもこれも健治が親バカである証拠。 小さい頃から親もいず、2人で過ごし妹の成長を見守ってきた健治。 妹だけど健治にとって娘のような存在だった。 「じゃあね!お兄ちゃん!」 いつの間にか、学校の近くまできていたようだ。 健治の方へ振り返り、手を振る妹。 「おう!またあとでな」 健治の通う高校は妹の通う中学とは別の方向にある。 一本道から途中の別れ道までが健治が妹と一緒に登校出来る時間だった。 「あ、待ってお兄ちゃん!」 突然妹に呼ばれ、妹とは別方向に進んでいた健治は振り返る。 「今日は早く帰ってきてね?」 妹は首を傾けながら笑顔でそう言った。 健治はなぜ妹がそう言ったのか分からなかったがとりあえず頷く。 妹はそれを確認すると笑顔で去った。 そして健治は学校へと向かったのだ。 「お~犬養!オハヨー」 手を振りながらこっちへ向かい、挨拶をする男がいた。 「若草…はよ」 欠伸をしながら健治は挨拶に答える。 若草は健治の親友だ。 「お前の妹さん、今日も可愛かったな!」 若草は健治にそうそうに話しかける 「なんだよ。見たのか?」 「さっき挨拶されちゃった♪」 「おい…手ぇ出すなよ?」 若草のはしゃいでいる姿を見るや否や健治は若草を睨んだ。 すると若草は笑いながら 「分かってるよ。お兄ちゃん?」 と冗談めかして言う。 「キモッ」 2人はこんなやりとりをいつもしていた。
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