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自宅マンションへの帰り道。割と最近オープンしたばかりの真新しい、けれどアンティークな雰囲気のショーウインドウに飾られた人形に目を奪われた。
全体的には短めで、前髪だけ少し長めに流してる黒髪。ビー玉みたいにキラキラした薄茶色の瞳、うっすらと桜色した頬と唇、膝の上にきちんと揃えられた丸みを帯びた手も可愛らしい。
色艶といい、まるで生きているみたい。いまにも動き出しそうだ。
「等身大だし人形って言うよりマネキン?最近のマネキンてこんな精巧な…ん…」
言葉を無くす。
にっこり笑ったから。
「ええ?!なっ、なんっ、え?」
カランカランと鐘のような音が聞こえて、店内から人が顔を出す。
「どうされました?
叫ばれると近所迷惑ですので…」
「あ、あの!!これ…、ひと??」
「いいえ?」
「ですよね!!でも、いま笑ったんだけどっ」
「そりゃ笑いもしますよ、お客さん面白いから」
「えええっ??」
「ふふ、冗談ですよ。立ち話もなんですし、店内へどうぞ」
「あ、はあ…。」
もう一度、あの少年の姿をした人形を振り返る。
「…見、間違い…か??」
首を捻る俺の前には微動だにしない人形が静かに座っているだけだった。
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