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「落ち着きましたか?」
「はぁ…。
すみません、大きな声出してしまって…」
「いえいえ、構いませんよ。あんな風に反応して頂けると正直おもし…嬉しいですし。」
面白いって…別に言い直さなくてもいいのに。
真面目な人なんだなー。
「紅茶、おいしいです。」
淹れて貰った紅茶はとてもいい香りで、気持ちも安らぐ。残業で疲れた体が解れてく。
「有難うございます。おかわりお持ちしますね?」
「あ、すいません」
店内を見回すと、見るからに高そうな調度品がずらりと並んでいて…なんだかとても場違いな感じ。なかなかこんな機会はないしたまにはいいか。
店内に仄かに漂う香りもすごく好み。寝室で使ってるアロマキャンドルと似ていてリラックスできる。って、眠くなってどうする!
「お疲れみたいですね。呼び止めてしまってすみません。」
「いえ!こっちこそ、こんな時間にお邪魔してしまって」
「気になさらず。お時間が許す限りごゆっくりどうぞ。」
等身大の人形を扱っているこの店は、オーナーひとりで切り盛りしているらしい。
緩くパーマがかった黒髪を束ねて背中に垂らして、それがまた似合う端整な顔立ちだ。
「どうぞ。」
「ありがとうございます…」
お茶を注いでくれる所作もいちいち格好良い。この人も人形みたいだなぁ、いや人形にしちゃ濃い美人だなぁ、なんてぼんやり考えてお茶を啜る。やっぱり美味しい。
「いつもこんな遅くまでお店開けてるんですか?」
「いえ、今日はたまたま…
営業時間は特に決めてませんし、気分次第で。」
そう言って優雅に微笑む。
「そうですか、羨ましいな」
俺なんて、毎日毎日仕事に追われてさー
まぁ、ぶっちゃけね。出来るから次々仕事が舞い込む訳だけど…なんつって。
「癒しがあればもっと頑張れるのにな~」
うん、癒しが欲しい。さっきの人形みたいな。
「あ。そういえば、人形のコト聞きたいんですけど」
「ええ、ぜひ近くでご覧になってください。こちらへどうぞ。」
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