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照明が絞られた隣室の奥、窓際に飾られている子の他にも数体、個々に雰囲気が違う可愛らしい少女人形が並んでいる。
「この子は“奏でる”と書いてカナ。ここで唯一の少年人形です。」
オーナーがくるりと椅子を回転させてくれたので、近くで見ようと奏の前に膝を付く。
「あれ、目…閉じてる…」
外で見た時は確かに開いてたんだけど。
「ああ、22時過ぎましたからね。」
「え、時間で??どんなカラクリが……」
「この子は夜更かしが大好きですから。他の子達は20時には寝てしまいますけどね。」
「……ソウデスカ。」
会話が噛み合わない…。
ぐるり見回すと、確かに他の人形達も目を閉じていた。
「この子がここに座ってるのはどうして?」
「たまたまですよ。順番に外の世界を見せてるんです。」
「そうなんだ…。」
ここに座って居たのがこの子だから、きっと足を止めたんだと思う。でなきゃこの店の存在にすら気付かないまま帰ってただろうな。
「この子が今日貴方と出会えたのは偶然です。
まあ、今日でなくともいつかは出逢えていたかな…
必然かもしれませんね。」
出会えたことが、必然…かあ。
「あの、触ってもいいですか?」
「ええ、どうぞ。」
そっと手を伸ばして頬に触れた。
硬質な手触りを想像していたけど、見事に裏切られた。
「やわらかい…」
人形とは思えない感触に胸が震える。
頬を撫でる俺の手を掴む少し小さめの手。
……へ!!
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