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「おかしな人ね。悪い意味ではなくてよ?」
「よく言われます」
「私ばかりが話してしまいましたから、次は私が質問してもいいかしら?」
「どうぞ?なんでも答えますよ。素敵な宿と美味しい夕飯とお茶の礼です」
カップを指で弾いてジェイクがウィンクをしてみせる。
ジェイクがおどけたのに、今度はシェイラが苦笑した。
「少し…気になったんです。イナちゃんのこと」
言わんとすることをなんとなく悟って、ジェイクは微笑んで先を促す。
「その…どうしてあんな年端もいかない子を一緒に連れているのでしょうか?賞金稼ぎは危険な仕事ですし…」
「んー…気持ちのいい話じゃないんですけど」
ジェイクは一口紅茶を啜り、軽い口調で話し始めた。
「あいつ、笑わないでしょ?感情の起伏も乏しいし」
「え?えぇ…まぁ」
「あいつは、両親がどこの誰かも知らない。…あいつが生まれてすぐに殺されました」
「えっ…!?」
カチャッとシェイラのカップがソーサーの上に落ちる。
「あいつには少し人とは違うものがあって、そこに目をつけたどこぞの金持ち野郎がイナの両親を殺して奪った。そして幼いうちから虐待を繰り返され、あいつは笑い方を知らずに育ったんです。自分の両親を殺した人間を、祖父だと信じて疑わずに」
「そんな…なんて酷い…ッ」
「…で、俺はイナを頼まれました。『WORLD END』からね」
ジェイクの言葉に、シェイラの瞳が大きく見開かれた。
「『WORLD END』ですって…!?史上最高金額の賞金首…あの伝説の!?」
「驚きますよねぇ。まぁ、俺は直接会ったわけじゃなくて、虐待されて傷ついたイナと一緒にあった手紙を読んだだけなんですけど。イナを拉致したヤツは賞金首でしたから、俺はたまたまヤツを追ってて…着いた時には屋敷なんてものはなく、瓦礫の山とイナだけがいたんです。『WORLD END』に頼まれて断れるわけもないので、今一緒にいるってわけでして」
ニコッと笑ってみせるジェイクを呆然と見つめ、シェイラは感嘆の息をもらした。
「何というか…こんなにインパクトのあるお話は初めてですわ」
「そうでしょうね」
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