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「…っと」
滑り落ちていく最中、ジェイクはイナを抱きかかえ、そのまま着地したのは砂の感触を感じる地面。
そこは丸く形作られた場所で、天井は高く、円錐型をしていることが分かった。
自分たちが落ちてきた穴が壁に一つだけあり、あとは目の前にそびえ立った巨大な鉄製の扉のみ。
そして、壁には無数の傷と、こびりついて変色した血液。
「建物内にバトルフィールドを作るなんてな。金持ちの考えることはホントわからん」
「同感だわ」
ジェイクの腕から降り立ち、イナが自分の身体をはたいていると、扉が軋んだ音をたてながら開く。
「遂にお出まし、だな」
ジェイクが笑顔で呟いた。
徐々に露わになっていくのは、鎖に身体中を覆われた一人の巨体。
通常の人間より遥かに巨大で、人間というより何かの獣のようでもある。
頑丈に太い鎖が身体に巻かれ、更に手には厚い鉄の拘束具。
その姿は、異様以外のなにものでもなかった。
「これはまた…えらく巨大化しちまって」
「この成長の仕方だと、きっと理性はないでしょうね」
「恐らくな。相変わらず惨いことしやがるねぇ…『TOB』は」
「《ほう、『TOB』の存在を知っているのか。貴様ら、ただの賞金稼ぎではないな》」
バトルフィールドにスピーカーを通して響いた声はツィンスター。
「お前も『TOB』を知ってこいつを買ったクチかい?ツィンスターさんよ」
「《如何にも。噂には聞いていたが、実際に見たことはなかったよ。その“バドシアス”を見るまではな》」
ツィンスターが名を呼ぶと、巨体は鎖を鳴らして身じろぎをする。
それを見て、少しだけイナの目が開かれる。
「まだ…分かるの…?」
その小さな呟きを聞いたか聞かずか、ジェイクが口を開いた。
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