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「バドシアス…長年の紛争直下である北の傭兵部隊元部隊長で、完全無敗の記録を誇る。傭兵を抜けてからはどう間違ったのか殺し屋稼業。そこでも完璧な仕事ぶりで一流の殺し屋としての名を馳せた。それから数年後、パッタリと姿は消えた…多額の懸賞金をそのままにな」
スピーカーから聞こえる拍手と笑い声が室内を満たす。
「《素晴らしい!!今までの賞金稼ぎたちの中で一番の情報量だ!!では、『TOB』についてもそこまで詳しく知っているのかね?》」
ジェイクは大仰に手を挙げてみせた。
「当然だ!なんたって俺たちの狙いはバドシアスそのものじゃないからな」
「なん…だと?」
ツィンスターの目が見開かれ、モニターに釘付けになる。
映し出されている男は、確かに微笑み、こちらを見ていた。
ジェイクがツィンスターに向けて言葉を続ける。
「俺たちは賞金稼ぎを名乗っちゃいるが賞金は『本来の目的』のオマケで、生活費でしかないわけ。んで、俺たちの『本来の目的』っつーのがね…」
ジェイクの瞳を直視して、ツィンスターは初めて背筋がゾクッと凍えた。
「―――世界中に散らばった『TOB』の回収と、この世からの完全抹消だよ」
陽気な口調でおどけていても、ジェイクの瞳の奥には人を根底から恐怖させる何かが蠢いている。そんな気がした。
「貴様ら…何者だ…!!?」
戦慄くツィンスターが口にする。
「あーぁ、自己紹介が遅れたな。俺の名前は“ジェイク・アンジュイエル”。ちょいと名の知れた賞金稼ぎだ」
にんまりと笑ってジェイクが口にした名に、ツィンスターは思わずモニターから弾かれたように身体を仰け反らせた。
先ほどまで自信たっぷりに笑んでいた顔からはその欠片すら消え、目玉が飛び出すのではというくらい大きく両目が見開かれる。
身体はガタガタと震え、冷や汗が全身を伝って落ちた。
「ジェイク…アンジュイエル…“ジェイカンジェル”だと…っ!?この世に二つとない神の名…それを持つ者は…まさか…っ」
ゴクリと唾液を嚥下し、喉から声を絞り出す。
「…『WORLD END』…!!?」
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