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その言葉を耳にして、イナが口を開いた。
「よく見ておきなさい。哀れな下種」
ゆっくりイナが振り返り、しっかりとカメラを見つめ、モニター越しにツィンスターを射る。
そのイナの瞳を目の当たりにして、ツィンスターは驚愕した。
「銀の…瞳…!!?」
イナの左手首に、複雑なタトゥーが浮かび上がり、妖しく光り出す。
「ディンク、出番よ」
タトゥーの模様からタールのようなものが意思をもったように動きだし、イナの手首に絡みつき、何かの形を形成していく。
それは見る見るうちに一つに固まり、コウモリのような羽を持った黒猫が現れた。
コバルトブルーの透き通ったガラスの瞳には、イナの手首に現れたタトゥーと同じ模様がある。
「お久しぶりでございます、我が主」
黒猫は優雅に会釈した。
「また力を借りるわよ」
「御意に」
モニターを見つめるツィンスターは正しく唖然とした。
「まさか…そんな…」
そう呟いただけで、あとの言葉はうまく出てこない。
そんなツィンスターの背後から、急に明るい声があがった。
「まぁ、驚くのも無理はないな。俺も初めて見た時は絶句したよ、信じられなくて」
その声の主が分かっていて、ツィンスターは更に顔色を無くす。
「あいつは『ディンク』っていう“悪魔”でね。あんなに小さいけど万能で、破壊力もあるってもんじゃない」
「悪、魔…」
声を復唱して、ツィンスターの疑念は確信に変わった。
「悪魔を仕えて…しろがねの瞳を持つ者…書物でしか読んだことのない伝説の…ッ!?」
「…そう」
足音も気配もさせず、その声は耳元で聞こえて、ツィンスターの身体は跳ね上がる。
汗が伝うツィンスターは身体を微動だに出来ず、それでもその声は続けた。
「この世界でただ一人…唯一無二の―――『魔女』だよ」
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