―世界の終末と生き残り―

3/11
前へ
/47ページ
次へ
その言葉を耳にして、イナが口を開いた。 「よく見ておきなさい。哀れな下種」 ゆっくりイナが振り返り、しっかりとカメラを見つめ、モニター越しにツィンスターを射る。 そのイナの瞳を目の当たりにして、ツィンスターは驚愕した。 「銀の…瞳…!!?」 イナの左手首に、複雑なタトゥーが浮かび上がり、妖しく光り出す。 「ディンク、出番よ」 タトゥーの模様からタールのようなものが意思をもったように動きだし、イナの手首に絡みつき、何かの形を形成していく。 それは見る見るうちに一つに固まり、コウモリのような羽を持った黒猫が現れた。 コバルトブルーの透き通ったガラスの瞳には、イナの手首に現れたタトゥーと同じ模様がある。 「お久しぶりでございます、我が主」 黒猫は優雅に会釈した。 「また力を借りるわよ」 「御意に」 モニターを見つめるツィンスターは正しく唖然とした。 「まさか…そんな…」 そう呟いただけで、あとの言葉はうまく出てこない。 そんなツィンスターの背後から、急に明るい声があがった。 「まぁ、驚くのも無理はないな。俺も初めて見た時は絶句したよ、信じられなくて」 その声の主が分かっていて、ツィンスターは更に顔色を無くす。 「あいつは『ディンク』っていう“悪魔”でね。あんなに小さいけど万能で、破壊力もあるってもんじゃない」 「悪、魔…」 声を復唱して、ツィンスターの疑念は確信に変わった。 「悪魔を仕えて…しろがねの瞳を持つ者…書物でしか読んだことのない伝説の…ッ!?」 「…そう」 足音も気配もさせず、その声は耳元で聞こえて、ツィンスターの身体は跳ね上がる。 汗が伝うツィンスターは身体を微動だに出来ず、それでもその声は続けた。 「この世界でただ一人…唯一無二の―――『魔女』だよ」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加