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~After5years~
荒野が広がる世界。
それを寸断するような長い線路。
その上を重たい音をさせながら、これまた長く連なった機関車が駆けていく。
機関車が行き着いた先は、一つの大きな街。
駅に響くアナウンスの声は駅の名前を怠そうに伝え、機関車からはたくさんの乗客が降車する。
「んーっあ!着いたぁ!」
駅に降り立つなり、めいっぱい伸びをしながら叫んだのは、一人の男。
乗客たちの中でも、一際目立つ身丈ほどの大きな黒革のケースを背負っている。
「…邪魔よ。早くどいて」
彼の背後から小さいけれどしっかりとした口調で、淡々と叱責する声がした。
「へ?わっ、ごめん!!」
声に慌てて振り返れば、彼の身体にすっぽりと隠れる小柄な少女が無表情で立っている。
ちゃんと食べているのかと心配してしまうほどに細く、色も白磁のように白い。
「荷物持って」
「はいはい!ただ今っ」
ピンクのクマがのっているボストンバックと、古びたリュックを彼が持つ。
その横をスタスタと少女が過ぎていった。
「待ってよ~イナぁ」
「そんな情けない声で名前を呼ばないで」
駅を出て、少女がピタリと足を止める。
「んん?どったの?」
少女は無言で指を差した。
彼は差された先に視線を向ける。
「いやぁぁ!!やめて…やめてください!!」
「さぁ、どうしようかなー」
いかにもガラの悪そうな男が三人。
一人は幼い男の子の胸ぐらを掴みあげ、男の子は苦痛に顔を歪めたまま宙に浮く足をバタつかせている。
残りの二人は、泣き叫ぶ女性の傍に張りついて下品な笑い声をあげていた。
「お願い…お願いします…っ!!どうか、子どもには…っ」
「って、言ってるけど~?」
「でもさぁ、このガキがクリーニングしたばっかのツィンスター様の服汚しちまったしぃ」
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