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「ガキでも落とし前って大事だろ?なぁ?」
そう言って、更に子どもの身体を愉快げに高く掲げる。
住民たちは無念の色を浮かばせつつ、遠巻きに見ることしか出来ない。
「―――大事かなぁ?子どもは子どもらしく、って決まってるじゃん」
そこに、さも当たり前のように口にした言葉が、辺りに響いた。
「…あぁ~ん?」
それをしかと聞いた男たちは不機嫌さを露わにして、声のしたほうを見やった。
そこにいた一人の男は、平然とした様子で自分たちを見据えている。
「おいおいおい…今言ったのは兄ちゃんか?」
男の一人が歩み寄ると、彼はニッコリと笑ってみせた。
「うん、そう。弱い者イジメはよくないって。しかも相手は子どもだろー?もうホント、そういうのってどうかと思うけど」
自分たちをナメているとしか思えない態度に、三人は青筋をたてる。
「テメェ…やんのかオラァっ!!」
一人が勢いよく拳を振りかざし、周囲にいた住民たちからは小さく悲鳴があがった。
彼はスルリと拳をかわし、振り下ろされた手首を掴んで反対側にねじ上げる。
ゴキッという音がして、男の肩が外れた。
「ぐぁぁぁッ!!」
あまりの素早さに、一瞬どうなったのか周囲は分からなかった。
彼から手首を離された男は半泣きになりながら、地面にうずくまっている。
「ごめんね?誰かにハメてもらって?」
軽く謝罪をした後、彼は子どもを掴みあげている男に視線を向けた。
「そろそろ離そうか、その子」
彼が歩みを進めると、別の男が腰からナイフを抜き出した。
「ぶっ殺してやる…っ!!」
恐怖と怒りに目をギラギラとさせて、ナイフ片手に男が突っ込んでいく。
彼しか捉えていなかった視界に、一人の少女が突如現れた。
「な、なんだっ!?」
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