5人が本棚に入れています
本棚に追加
男の足が反射的に止まった瞬間、少女の身体が軽やかに回った。
と思った刹那。
「ぐへぶっ!!?」
少女のかかとが男の顔にめり込み、男の身体が飛んでいく。
最後の男がそちらに気を取られた、その一瞬。
彼の拳が男の脇腹に打ち込まれ、強烈な衝撃と激痛が走った。
「ひ、ぎゃぁ!!!!」
子どもを掴んでいた手が緩み、落ちていく子どもを彼が優しくキャッチした。
「大丈夫か?」
「う、うん…」
キョトンとした男の子の顔を覗き込み、彼は笑う。
「よしっ!んじゃお前ら、さっさとどっか行っちゃって。あ、気絶してるヤツ連れてけよ?」
「くっ…!お、覚えてろよ!!」
少女に蹴り飛ばされた男を引きずりながら、男たちはヨロヨロと走り去っていった。
「ママぁ!!」
「カイル…!」
彼の手から離れ、男の子は母親に駆け寄り抱き合う。
周囲から歓声と拍手が巻き起こった。
「よくやったな、兄ちゃんたち!」
「あたしゃ気持ちよかったよ!ありがとねー!」
「いやいやぁ。どーもどーも」
周囲の声に応えつつ、彼は歩み寄ってくる少女に声をかける。
「さっきはあんがと、イナ」
「…どういたしまして」
「…あの…」
二人のもとに、母親と子どもがやってきた。
「本当にありがとうございました」
「ありがとうです」
深々と頭を下げる母親を真似て、子どもも頭を下げる。
「私はシェイラと申します。この子はカイルです。なんとお礼を言えばいいか…言葉では足りません」
「あ、俺はジェイクです。こっちはイナ」
「どうも」
「二人とも困ってる人は捨て置けない性分だっただけですから、気にしないでください」
「そんな…!何かお礼をさせてください。あまりお金はないのですが」
「とんでもない!お金は必要ありません」
「でも…」
「えっと、それならこの街のいい宿を紹介してもらえますか?あと美味い店も」
ジェイクのその提案に、シェイラは初めて優しく笑った。
「それでしたら、とっておきの宿屋がありますよ」
最初のコメントを投稿しよう!