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「『賞金稼ぎ』、ですか?」
シェイラの言葉にジェイクは目を丸くする。
答えを待たずにシェイラが続けた。
「こんな仕事してますでしょう?わかるんですよ、なんとなく。うちの人が、賞金稼ぎの方と話すのが好きで宿屋を始めたようなものだから」
「シェイラさん…」
「元々この街は鉄鋼業が盛んな街で、住民も豊かなほうだったと思います。作業員や業者の出入りも多くて、いつも賑わっていて…幸せでした。…ツィンスターがこの街に目をつけるまでは」
シェイラの、カップを持つ手が震えた。
「ツィンスターはこの街の鉄鋼会社を買い占め、すべての売り上げを独占していったのです。この街の住民は、ほとんどが鉄鋼業の作業員で、支払われる給料を減らしていきました。今ではどの家庭もギリギリの生活です。昼間の男たちはツィンスターの部下で、ああやって住民を脅したり暴れまわっています。遂にはツィンスターのやり方に反対する者が出て…うちの人は、反対派のリーダーでした」
シェイラの視線が壁にかかる写真に向けられた。
ジェイクも同じ場所を見つめる。
そこには赤ちゃんを抱くシェイラと、カイルによく似た男性が写っていた。
幸せそのものの、家族写真。
「自分の信念を貫く、強い人でした。優しくて、みんなに慕われて。だから…殺されたんです」
「ツィンスターに、ですか?」
「確証はありません。ありませんが、誰かに恨みを買うような人ではなかったから…」
シェイラの目に、うっすらと涙が浮かぶ。
「確証があれば、『帝国警察』に突き出したのに」
「帝国警察、ねぇ…」
「あ、ごめんなさい。賞金稼ぎさん達からしたら、ライバル関係でしたわね」
「はは…くされ縁なヤツもいますがね」
ジェイクは正しく苦笑して、シェイラは笑う。
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