死んで生きる。

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暗雲から止めどなく降る豪雨のなか。 一人の少女と兵器を率いた軍隊の血濡れた鬼ごっこが繰り広げられていた。 「彼奴を追えっ!逃がすなぁっ!!」 「殺してでも止めろ!!」 「打て!!」「火を放て!!」 そんな声とともに、光線銃の光や銃弾、爆弾が少女の横を掠める。 「っと・・・」 それらを少女は、恐ろしい程に落ち着いた紅い瞳で真っ直ぐ前を見ながら右へ左へと交わしながら走る。 黒いスキニーパンツとタンクトップに、真っ白なベストで、腰には銃と小刀、銃弾を入れたウエストポーチ。 肩には『10』の焼き印があり、黄色のショートヘアにインカムを着けた少女は、華奢な体つきをした男子に見える。 防具は元々無く、白い肌には、自分と誰の物とも知れない血が付着していた。 それでも少女は敵いそうにない敵を後ろに引き連れるようにして逃げ惑う。 が、もうそれも限界に達するようだ。 少女の行く末にあるのは、核兵器によって粉々に破壊された道。 その眼下には汚染されて灰色に濁った少しの水と、元は道であっただろう瓦礫。 ここからの高低差は・・・約6メートル。 落ちてしまえば命を落とすこと間違いなしだろう。 「絶体絶命・・・か。」 そう自嘲気味に笑いながら呟きぐるりと周りを見渡す。 崩壊したビルに、人が身を寄せていたであろう家の残骸。 そして、血で染められてボロボロになった兎の縫いぐるみの横に転がった細く小さい腕の骨。 それは少女自身も持っている物で、初めて少女が苦に表情を歪めた。 「い、いいいいたぞぉぉぉ!!!」 狂喜に満ちた声に咄嗟に振り向いた少女の後ろには、兵が数人。 どうやら途中で別の軍隊に殺られていたらしく、この数人は生き残りだろう。 そんな兵たちでも少女はもう戦おうとせずに、武器となる手を後で組み、にっこりと笑った。 「それはそれは・・・僕がここにいて良かったねー・・・」 「・・・何をするつもりだ?」 流石に少女の笑顔にたじろいた兵が顔を強ばらせる。 「僕はお前らに降参。よく頑張ったよ、本当に。でも、おっさんたちに首を渡すなんて嫌だからさ・・・ここでサヨナラ。」 笑顔で手を上げて一歩下がる少女。 「お前、ま「バイバイ。」 その数秒後。 瓦礫の上には紅い蓮の花が咲いたように血が広がった。
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