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蓮「・・・総司。」
現在、試衛館。
僕が入門出来るかどうかの交渉を土方さんに行ってもらっている間、僕と総司は待機していろとのことで、縁側に座っている時。
初めて僕から人に話しかけた。
総「なに?」
蓮「さっきなんでこの服なのかを聞いて、結局答えられなかったよな。」
総「うん・・・話してくれる?君が異人でも、僕は何も言わないから。」
敬語なしでも何も言われない。うん、話しやすい。
蓮「信じがたいかも知れないけど、僕は未来の日本から来たんだ。」
そう言うと総司はパッと顔を明るくした。
総「わぁっ!ねぇ、未来は平和?」
そんな総司の言葉を、僕はゆるゆると首を振って否定した。
蓮「一時は平和だったみたいだけど、僕が生まれる少し前に戦争が絶えなくなった。
そのお陰で、父さんも母さんも殺されてる中、僕は殺さず連れていかれたんだ。
戦争に何回も連れられて、同じ身になった子達も、良くしてくれた兵士も、死んで・・・それ、で・・・」
そこまで言うと、言葉が喉でつっかえてしまった。
代わりに涙が止めどなく流れる。
蓮「ごめ・・・僕・・・っ」
生まれてきっと数回しか流せていない涙。
今更思い出したんだ。
こんな僕にもいた仲間や、町に出れば、まだ笑っていた人々。
総「・・・もしかして、蓮火の名字がないのは、親が分からないから?」
僕が黙って頷くと、総司は僕の頭をポンポンと撫でてくれた。
総「じゃあさ。僕の名字、あげるよ。これからはもし許しがでなくて離れても、君と僕は家族でしょ!」
蓮「かぞ、く?」
総「うん。僕と蓮火が死ぬまで。だから蓮火ぜろいちだっけ?それじゃなくて、沖田蓮火ね!」
涙で霞んで見えないけど、総司は眩しいくらいの笑顔を浮かべている気がする。
蓮「う、ん!」
だから僕も涙を袖で拭きながら、笑顔で答えた。
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