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なぜ、人間は自然の環境に身を置きたがるのだろうか。大地を固いコンクリートで覆い尽くして、人工の環境に身を置きながらも、なぜ自然への回帰をはかろうとするのか。
遺伝子操作によって生み出された人造人間――レプリカントの少年キップは考えていた。虫にたかられ、動物の糞を踏んで歩くのが快適だとでもいうのだろうか? それはない。人間は汚いものを嫌うからだ。自然に属するものはおおよそ汚いのだ。
彼が作られたのはスペースコロニー09――人工の惑星だ。そこは人工樹林が生い茂り、畜産用の人工生物が自由に暮らす環境区と、金属とコンクリートで覆われ、人間にとってもっとも暮らしやすいと思われる環境が配備された居住区に別れている。
他にも産業区やエネルギー生産区などもあるが、それらもまた人間が生きる上で欠かせないものだ。
このように、わざわざ自然の惑星を開拓しなくとも、人間にとっては人工の環境こそが快適であることは明らかなのだ。
現に、地球の人口は年々コロニーに移民し、減少傾向にある。今となっては一部の物好きが半自給自足の生活をしているぐらいだ。
それとも、このヒエラルキーの上層部は一部の物好きと同じ類の思考の持ち主によって構成されているとでも言うのだろうか。
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