第一章

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「でね、超うっざいの。」 「だよね~。 まじウザイし、あいつ男好きだよね」 「ねー。 ーー結、なんか、暗い?」 「え? ……そう?」 いつもならここで笑って、大丈夫って言うけれど、今日は言う気にもなれなかった。 しかも、今日は一段と悪口が激しい。 ーーもう無理。 ちょっと気持ち悪い……。 「ごめん、ちょっと行くね。」 私はさっぱりとそう告げて、その場から逃げるように立ち去った。 昨日よりも少し、冷たい春の風。 廊下の窓から果てしない空を見ていると、心が落ち着いた。 ーーあんなお父さんにさえ嫌われたくないなんて思ってるなら、私は超ちっぽけだ。 朝のお父さんの言葉が蘇る。 …………。 胸の不思議な物を抑え込もうと、また親指を強く握る。 そういえば、香織と瑞希、やっぱり気分悪かったよね。 謝らなくちゃ。 お父さんの言葉を打ち消すように、私は謝る言葉をひたすら考えながら、歩き出した。 なんて謝ろう、差し支えないように謝らなくちゃーー 前をパッと振り向いた瞬間、 廊下の窓に友達ともたれかかる、すっかり見慣れた姿があった。 ーー安西くんに昨日言われた言葉が、 謝る内容を考える私に突き刺さる。 ……いいの、私はこれで。 目を合わさないよう、少し早足で教室へと向かった。 ーーあれ? いない…… その時、数メートル先の女子トイレから、甲高い笑い声が聞こえた。 多分、香織の声だ。 私はためらいなく、また足を速めたーーーー
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