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「でね、超うっざいの。」
「だよね~。
まじウザイし、あいつ男好きだよね」
「ねー。
ーー結、なんか、暗い?」
「え?
……そう?」
いつもならここで笑って、大丈夫って言うけれど、今日は言う気にもなれなかった。
しかも、今日は一段と悪口が激しい。
ーーもう無理。
ちょっと気持ち悪い……。
「ごめん、ちょっと行くね。」
私はさっぱりとそう告げて、その場から逃げるように立ち去った。
昨日よりも少し、冷たい春の風。
廊下の窓から果てしない空を見ていると、心が落ち着いた。
ーーあんなお父さんにさえ嫌われたくないなんて思ってるなら、私は超ちっぽけだ。
朝のお父さんの言葉が蘇る。
…………。
胸の不思議な物を抑え込もうと、また親指を強く握る。
そういえば、香織と瑞希、やっぱり気分悪かったよね。
謝らなくちゃ。
お父さんの言葉を打ち消すように、私は謝る言葉をひたすら考えながら、歩き出した。
なんて謝ろう、差し支えないように謝らなくちゃーー
前をパッと振り向いた瞬間、
廊下の窓に友達ともたれかかる、すっかり見慣れた姿があった。
ーー安西くんに昨日言われた言葉が、
謝る内容を考える私に突き刺さる。
……いいの、私はこれで。
目を合わさないよう、少し早足で教室へと向かった。
ーーあれ?
いない……
その時、数メートル先の女子トイレから、甲高い笑い声が聞こえた。
多分、香織の声だ。
私はためらいなく、また足を速めたーーーー
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