1章

3/36
前へ
/112ページ
次へ
一向に途切れない着信に少しイラ立ちながら、仕方なく通話状態に切り替える。 できるだけイラ立ちを押し殺し、平静を装い電話にでる。  「…はい」  『あ、雅人さん?良かった、お仕事中かと思っていたから…』 相手の言葉に眉根を寄せる。 実際、つい数分前に全ての業務は終了していたが、そう思っているなら、長々とコールしなければいいのに。 仮にも、自分だって社会人だろ。  『あの、今度の土曜なんですけど、予定空いてますか?』  「…土曜?」 パラリと手帳をめくり、空白を確認する。  「特に予定はないよ」  『よかった…同じ課の子が、いいランチを教えてくれて 雅人さん、いつも出先で済ませてくるから…一緒に、行きたいなって…』 少し照れたような声。 電話の向こうでは、顔を赤らめているのが容易に想像できた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加