1章

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荷物を鞄に詰め、戸締まりをチェックしてからフロアを後にする。 地下駐車場へ向うエレベーターを待ちながら、事の発端を思い浮かべた。 ―三ヶ月前―  「今回のプロジェクトは社運を賭けた、と言っても過言ではない。まだ細かい調整は残っているが、今日で一区切りだ この数ヵ月は特によく頑張ってくれた。本当にご苦労だった。店を押さえてあるから、皆ゆっくり羽を伸ばすといい」 伯父であり社長の誠司さんが労いの言葉をかけると、会議室わっと沸いた。 構想から4年、初期から携わっていただけに、感慨深い。 昨年から本格的に始動し、プロジェクトの営業責任者に抜擢されてからは、正に寝る間も惜しみ、深夜までの残業や、自宅へ仕事を持ち帰る日が続いた。 これまで営業成績はトップだったが、更に伸びた数字に内心、目を丸くしたものだ。 それまでも努力はしていたが、自分にまだこんなにも延び白があったのかと考えさせられた日々でもあった。 食生活も不摂生だったのに、よく倒れなかったなと、苦い笑みが溢れる。
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