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「あの真っ赤になってるの、今年入社した宮下常務の娘さんの希美ちゃん。
さっきから、早坂課長のことチラチラ見てましたよ」
確かに、先程から視線を感じていた。
総務に顔を出す時も、宮下希美は似たような行動をしていたな…
「あの娘、絶対課長のこと気にしてますよ。分かりやすすぎ。
真っ赤になっちゃって、初々しくって可愛いっすねぇ~。さすが今年のトップ」
毎年、新入社員で一番人気は、隠語の様にトップと呼ばれる。
本当に投票する訳ではないが、まぁ社員の多い会社じゃどこでも似たようなもんだろう。
小柄で白い肌の彼女は、確かに可愛らしい顔立ちで、同僚達が色めき立っていたのも頷ける。
それにしても、沢谷も気づいたか…
あれだけ分かり易く反応されたら当然か。
「社長の親族で、常務の娘さん手に入れたら出世コース真っ直ぐらっすねぇ~。
早坂課長!一生一生付いていきます!」
他の奴に言われたら嫌味に聞こえるが、イジラレキャラの沢谷だと平気だ。
「ふ~ん。お前…俺に付いてくる理由そこなんだ…」
「ちょっ、なっ、違いますよ!
同じ営業として尊敬してますって、マジで!」
わざと冷たい視線を投げれば、慌てて身ぶり手振りが大きくなるのが面白い。
いい意味で沢谷はムードメーカーだ。
成績も悪くない。
相手に不快感を与えない沢谷は、営業先でも好印象を受けやすい。
技術を磨けばまだまだ伸びるだろう。
入社2年で今回のプロジェクトに参加できたのは、持ち前の明るさと将来性を見込まれてだろう。
酔っぱらうと学生の様な口調になるのはご愛嬌だ。
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