中途半端な転校生

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「あ、あれ転校生じゃないですか」 「話を反らすな。そもそもお前は校門すら見えていないだろう」 「帰っていいですか」 「駄目だ」 授業に戻りたい…。 ただでさえ勉強わからないのに授業なんてサボったら追試…下手すると留年、退学…。 「あ!ちょっと!」 「ん?」 背後からの声に会長が答えた。 いや、会長は真正面か。 「オレ、ここに転校してきたんだけど」 ああ、やっぱり転校生か。 それにしてもよく通る声だな…。 「そうか」 「そうだ」 「…………」 「…………」 「ちょ、おまいら会話しろし」 なんだ!?会長はコミュ障なのか!? 普通そこで「じゃあ職員室に連れていく」って言うだろ!? 転校生も先輩に対して態度でかくね? 「…ところでソレは?」 「まさかオレのこと!?ソレ扱い!?誰じゃなくてソレ!?」 「ああ、お前の迎えだ」 ぺいっと転校生の前に投げられる。 扱いはデリケートにオナシャス。 見上げるとくせっ毛の黒髪に眼鏡の転校生。 …確実にかつらだなこの人。 でもイケメン。 「会長とキャラ被りクソワロタ」 「ん?」 「首傾げた姿もイケメンとか」 転校生…川田が言ってたように変装してるっぽい、がイケメンオーラ(笑)が隠せてないぞ。 「えっと…浪川歩だ。よろしく」 「ああ、オレは同じクラスの……」 「同じクラスの…?」 「悪い、名前後でいいか?」 ここでは名乗ってはいけないと本能が告げている。 そう、後ろに生徒会長がいるからさ。 「オレは別にいいけど…。お前はオレの迎えなんだろ?」 「あ、ああ。まあ…そうだな」 「じゃあ、あんたは何のためにいんの?」 会長に指を指す。 お前は勇者か。 「オレも迎えを頼まれたんだよ。そいつとは別口でな。…職員室に行ったら生徒会室に来い、必ず。お前、ちゃんと連れて来いよ」 「はあ…わかりましたけど」 「けど、なんだ?」 「なんでもないです」 そんな凄まれたら逆らえませんよ。 なんたってチキンなオタクですもん。 そんなオレを鼻で笑いながら生徒会長は校舎に向かった。 そこで転べ。 みっともなく転べ。 というオレの呪いは効くはずもなく、生徒会長は安全に校舎の中へと入っていった。 ちくせう。 「じゃあ、まず職員室まで案内するよ」 「ああ、よろしく」 まず職員室、その後生徒会室か…。 浪川君に悪いけど…教室帰りてぇ…。
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