中途半端な転校生

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「遅いぞ。1年4組佐々木陽太に転校生浪川歩」 バタンと扉を閉める。 なんか今、扉の向こうに椅子に座って踏ん反り返っている生徒会長らしき人がいた気がしたんだけど。 いや、生徒会室だからいるんだろうけど。 しかもオレの名前が会長に知られてたような…。 うん、幻聴だな。 ゆっくりと振り返り歩を見る。 「歩、オレ此処まででいいかな?いいよね?」 「いや…」 「だってオレ連れてきたし!入れとか言われてないし!」 「入って」 「うひぃ!!」 背後の扉が開いて中から顔が出てきていた。 「脅かせんといて!」 「…?脅かして…ない。入って」 じっと見つめられ陽太は後ずさった。 今日は桁外れなイケメンとよく会う日だ。 しかも関わりたくない系の。 出てきたイケメンを見上げて恐る恐る尋ねる。 「もしかしてオレも…?」 こくんと頷き手を引かれる。 普通、手を引かれるのは歩じゃないのか? 「浪川歩も、入って」 「上から目線な感じがムカつくな」 「お前も中々上から目線だぞ」 「オレ、先輩。上」 上…、ああ年上ってことか。 この人はしゃべるのが苦手なのか、単語をぽつぽつと声に出す。 でも聞き取り難くはないし、はっきり声に出してる。 そのまま手を引かれ生徒会室に連れられると会長とご対面。 なんてこったい。 「会長」 「ああ、そこに座らせろ」 無口なイケメンはこくんと頷くと会長の前に陽太と歩を座らせ、自分もそのまま陽太の隣に腰掛ける。 手を握ったまま。 「あれぇ?けいちゃん、佐々木陽太くんと仲良かったのぉ?」 陽太から見て左側のソファに座っている男は首を傾げた。 チャラい。 第一印象はこれに限る。 髪は金髪でピアスは右耳に2つ、左耳にひとつで首にネックレスが1つ。 制服はある程度着崩しているが、似合っていて不快には感じない。 「…初対面」 「うっそぉ…。オレにも懐いてくれないのにぃ」 「由紀、や」 「や、って可愛いなぁ。一回だけ、だめぇ?」 ふるふると首を振り、陽太の手を噛む。 「えっ!?ちょっ…!!何するん…!?」 今度はなめられた。 おかしい。 何がおかしい。 全部おかしい。 「陽太、美味しそう…」 「美味しくないから!初対面で何これ!?わけがわからないよ!!しかも何で名前呼び!?何で名前知ってんの!?」 生徒会の役員はみんな変人なのか。
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