中途半端な転校生

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「生徒会長と役員のみなさん…ね」 爽やかイケメンは陽太が先程言った言葉を小声で繰り返す。 何か気に障っただろうか。 陽太が爽やかイケメンの顔を見る。 爽やかイケメンはにこりと微笑む。 その笑顔に何か嫌な予感がした。 「自己紹介がまだだったね。僕は生徒会書記、黒川真哉という。よろしくね」 「えっ…まさ…」 「彼は駒沢啓太。会計だ」 何かを言おうとした無口イケメン、もとい駒沢先輩は爽やかイケメン黒川先輩に遮られる。 「はあ…、黒川先輩に駒沢先輩です…よね…。生徒会ですし…知ってますよ」 「ふふっ。それは嬉しいね」 嘘である。 でも知らなかったら変に思われそうだから知ってるフリをする。 全校生徒で生徒会の名前を知らない人はいないだろう。 陽太以外。 いや、伊織も多分興味ない。 「で、彼が」 「副会長の近藤由紀でーっす!」 いえいっとピースをする。 そのまま「綺羅星ッ!」て言ってくれないかな…。 チャラい副会長の近藤、無口な会計の駒沢、爽やか書記の黒川。 川田に聞いてた通りだ。 チャラ男、無口、爽やか。 ただ…何かが引っ掛かる。 黒川先輩はにこりと微笑んだ。 黒い笑みだ。 「君、面白いね」 「は…?」 オレの何が面白いのか。 意味が解らない。 「真哉…お前なあ…」 生徒会長が呆れたように声を上げる。 何だ。何なんだ。 「陽太くん、生徒会に興味ないなんて珍しいねぇ」 「はい?」 「陽太、好き」 「それはもう意味が解りませんね!」 「陽太はオレのだ」 「悪乗りまだ続いてるのか!」 「オレも陽太くん好きだなぁ」 「あんたも悪乗りすんなよ!」 「生徒会は良くも悪くも殆どの生徒に知られてるから、名前と役職が合ってなかったら気付くはずなんだけどね。普通は」 黒川先輩が爆弾を落とした。 「はい…?」 名前と、役職が合ってない…とな? あまりの衝撃に思考が停止する。 「僕の役職は副会長」 「オレ、書記」 「オレは会計だよぉ」 「えっと…つまり…」 「お前は騙されたってことだ。まあ、生徒会役員を知らないやつがいるとは思わなかったがな」 生徒会長がじろりと見てくる。 やばい、やばい、やばい。 「ど、ど忘れですよ!生徒会の皆さんと会って頭が真っ白になったんですって!」 「じゃあ、オレの名前を言ってみろ」 …詰んだ。
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