中途半端な友人関係

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「陽太、案内」 「授業終わったらな」 「陽太から離れろ転校生。潰すぞ」 「いおりん物騒だからヤメテ」 ――あの後、光の速さで生徒会室から逃げた。 歩を置いていってしまったことに少なからず罪悪感を覚えたが、気付いたら後ろにいた。 この子怖い。 教室に入ると授業中だったけど、安達先生だったので許された。 俺の席、もっといえば俺の隣のいおりんの席から殺気を感じている。 どうやらオレに後ろから抱き着く形で教室に入ってきた歩が、何故かいおりんの癪に障ったらしい。 いおりんは椅子から立ち上がって歩を睨み、歩はオレを抱きしめる腕に力を込めた。 今ここ。 「浪川、とりあえず自己紹介しとけ」 安達先生がけだるそうに言う。 これは助け舟を出してくれたということだろうか。 「浪川歩。陽太以外に興味ない」 「できれば持ってくれ。あと、いおりん落ち着いて」 歩がオレの名前を出した瞬間、机が飛んだ。 ……いおりんの前の席の奴が不登校で良かったと初めて思ったぜ。 「陽太に触れるな」 「お前に指図される謂れはない」 「陽太はオレのだ」 「違う。オレのだ」 「おいおいお前ら何言ってんだ。陽太はオレのに決まってんだろ」 「いおりんと歩は自重してくれ。あと先生も参加しなくていいから」 ふと教室を見渡すと全員が口を開けたまま呆然としている。 川田という例外を除いて。 「転校生くん…かっこよくない?」 「確かに…」 「いやいや、須貝くんが1番でしょ!」 「先生だって!」 意識を取り戻したのかコソコソと話し始めるチワワ達。(川田曰く) 見た目が可愛いだけマシだが、内容は悲惨である。 少なくともオレにとっては。 ガチムチ共の会話は聞こえない。聞きたくない。 耳が聞くことを拒否している。 「陽太はいつの間に総受けフラグを建てていたんだ!きっとイベがあったはず…まさか見逃したのか…!ちくせう!……」 川田は真顔で呪文を唱えていた。 聞き取れないほど小さな声だが内容は大体予想できる。 そして時折ガッツポーズを取り、オレたちの様子をノートに書いている様だ。 悪魔か。 「眼鏡が。調子に乗るなよ」 「いおりん、眼鏡は貶し言葉じゃないぞ。全国の眼鏡に謝れ」 「ごめんな陽太」 「オレは眼鏡じゃない」 「見かけ倒しの不良かよ」 「歩、喧嘩売らない」 「陽太ごめん」 なんでこいつらはオレに謝るんだ。
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