中途半端な転校生

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昨日の夜から嫌な予感はしていた。 転校生の話も聞いていたから、なるべく関わらないようにと思っていた。 「はずなのになあ…」 HRの開始を告げるチャイムが鳴る中、学校の門の前にオレはいる。 べ、別にサボってるわけじゃないんだからねっ! と、脳内で好きな声優の声を再生し言い訳を試みる。 本当にサボっているわけではない。 仕事に追われているらしい担任に転校生の迎えを頼まれたのだ。 …川田が言うような王道野郎だったら迎えに来るのは副会長ではないだろうか。 昨日は散々王道転校生について語られた。 疲れてきたところに黒いオーラを放ついおりんが現れて中断されたが、大体は把握した。 「帰りたい、帰りたいよ」 大事なことだから二回言った。 「おい、お前が転校生か」 「は?」 肩を捕まれ、的外れな質問をされた。 むしろ転校生を待ってるほうですが。 つか肩痛い肩痛い!力加減考えて! オレ痛いの苦手なオタクだから! 「えーっと、どちら様で?」 「生徒会長の志田翔平だ」 ああ、川田が言ってた非王道生徒会長かな? 『一人称が俺様じゃないとか論外。族と繋がりがないし。眼鏡かけてる、副会長だろ、そこは。名前が普通。あと、前髪鬱陶しい』 …別にいいじゃないか。 可哀相だろ、会長。 特に最後の方は王道とか関係ないんじゃないか? てか、学校の生徒会長の顔ぐらい覚えないとだよな…。 いや、生徒会全員は覚えないとか。 「やっぱりお前が転校生か」 「えっ、いや」 「職員室連れていくからついて来い」 「ちょっ…!」 勘違い乙! というか先生、生徒会長が迎えに来るならオレ来た意味なくない!? 「早くこいっつーの」 「違っ!オレ違う!」 「あ゛ぁ?」 ヒィイイイ!! 逆らったら殺られるゥウウウ! でもオレ転校生じゃないもんね! どちらかと言えば新入生だもんね! ああ…生徒会長イライラしてるなあ。 なぜ解るかって? 会長に掴まれているオレの腕が糞痛いからだよ☆ 「いいから来い」 「うぇえええ!?」 会長に俵担ぎにされた。 チョウタカイ。チョウコワイ。 地に足がツイテナイヨー。 ぶわっと変な汗が出てきた。 オレ高いとこ、苦手。 「ぅ…うあ……」 「あ?おい、転校生…?」 もう…無理だ…。
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