栗返し一粒

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あなたは私を愛していなかったの? 酷いよ。 ーーーーー 私は人形。人形だから動けないし、喋れもしない。 だけど愛情を感じる事は出来る。 彼女はこんな人形(私)を愛してくれた。 凄く嬉しかった。 ガチャ あ、帰ってきたみたい。 おかえり…? どうしたんだろ?なんで泣いているの? 「何で…急に…あの時間は嘘…だったの…?…ずっと…一緒だったのに…。」 …どうやら彼氏と別れちゃったみたいでした。 ガタン! あぁ…乱暴に座っちゃって…。 チラッ あれ?こっち向いて― ガタン! 痛っ! ポスン… いたた…私にまで当たっちゃって…大丈夫かな? …いつからだろう。彼女が私と一緒じゃなくなったのは。 学校の時も寝る時もごはんの時もずっと一緒だったのに。 いつから? ーーーーー 「別れてくれ。」 「えっ?」 突然の別れだった。 「な、なんで?」 「…ごめん。」 ザッ… 彼は振り向かなかった。こんな事があったのは初めてだからどうすれば良いのか分からない。 「ま、まっ…。」 私はなぜか引き留められなかった。 「な…んで…?」 悲しい。嫌なくらい悲しい。 こんな事は起こらないと思っていた。 ずっとずっと続くと思っていた未来。それが壊れた。 「ただいま…。」 「おかえり~…どうしたの?」 「何でもない…。」 ガチャ 部屋の中は真っ白だった。いや、私の目に色が見えてないだけなのかな。 私は泣いた。 そして馬鹿らしくなって自分に腹が立った。 ふと目に止まったボロボロの人形。 不思議と人形が笑っているように見えた。 私は人形を机から突き落としてまた泣いた。 暫く泣いているとまた人形が目につく。 そして人形が笑っているように見える。 「笑わないで!」 私は拾い上げてタンスに勢いよく閉まった。
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