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第1章 一日目・α はじまり
Act.鵡川陽樹(むかわようき)
「説得しても無駄だよっ!」
晴れた日、ぼくは眼下に集まる人たちを言葉通り見下して叫ぶ。
ぼくがいるのは学校の屋上だった。
「ぼくはなにを言われても飛び降りるっ!」
「やめてっ!」
ぼくを止めようと必死なのは安住指子(あずみさしこ)。ぼくの担任だ。でもぼくにその言葉は響かない。
安住がどういう教師であるか、ぼくはおぼろげながら理解していた。
ぼくが死ねば自分の内申に響く。安住はそう思っているのだ。自分の私利私欲のために、ぼくの自殺を食い止めようとしている安住の言葉なんて響かない。
ぼくは自分がいじめられていると、何度も安住に訴えた。しかし安住は必要以上に生徒に関わらないような教師で、この学校もまた、いじめなんてないと言い張るような体質の学校だった。
だからぼくがいじめから解放されることはない。だったらやるべきことはひとつだ。なぜ、ぼくがこんなに苦しまなければならない。問題が問題として認識されないのなら、ぼくが問題を大問題に変えてやる。
ぼくにはそんな覚悟があった。
眼下には安住だけでなく、クラスメイトのほとんどが揃っていた。安住は自分の内申を守るために、休日にも関わらず、クラスメイトを呼び出してぼくを助けようとしていた。
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