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テスト前で部活も休みだということを考えればその呼び出しはずうずうしいにもほどがあるが、それでもクラスメイトたちはそれなりに集まっていた。ご苦労なことだ。
もちろん、全員がぼくを助けようとここに来たのではないというのは分かってるし、それで自殺が止められるなんてことは幻想でしかない。
ぼくは眼球をギロッと動かし、自分をいじめていた佐々木刃(ささきじん)の姿を見つけた。
クラスメイトの女の子がどういう気持ちか分からないけれど「やめて」と叫ぶなか、クラスメイトの男の子が何してんだよと呆れながらも、先生に言われたから仕方なく止めようとしているなか、佐々木刃はスラックスのポケットに手を突っ込んで、ぼくを見上げていた。気に食わない。何が気に食わないかって、刃のクソ野郎のその表情はぼくを完全に見下してやがった。
まるでぼくの自殺を楽しみにしているかのようだ。気に入らない、気に食わない。
今、見下(みおろ)して、見下(みくだ)しているのはぼくなんだぞっ!
ぼくは高揚する気持ちを落ち着かせるため足元に置いた遺書のことを見つめる。
遺書には、ぼくを苦しめたのは佐々木刃の名前が書いてある。これで佐々木刃の人生は終焉を迎えるだろう。
そう思うといいザマだった。グヒヒヒ、笑いが止まらない。
ざまあみろ、心の中でそうつぶやいて、ぼくはいよいよ空へと飛び出した。
ぐんぐん、ぐんぐん、降下していく。
覚悟はしていたので地面が近づいても、全然怖くなんてなかった。
「キャアアアアアアアアアアア!」
むしろクラスメイトから湧き上がる悲鳴が、妙に心地良かった。
グシャッと頭から落ちて、血が流れる。
「イヤアアアアアアアアアアっ!」
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