序 響き渡る銃声

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まだ寒い三月の真夜中 特殊暗殺部隊隊員、ノエル・ヴァ―ジニスは白い六連式の銃を片手に持ち、黒衣に身を包んで音も無く標的の車を追う。 長い黒髪、睨んだ者を震えあがらせるほどに冷ややかな紅の目、細く華奢な体、その全てから14歳の少女とは思えぬほどの殺気を纏っていた。 ノエルは標的を仕留めるためのある一瞬を待っていた。 その瞬間とは、車のスピードが落ちる瞬間だ。 粘り強く尾行を続けていると、その車が不意にスピードを落とした。その瞬間を見逃さず、ノエルは標的に向かって弾丸を放つ。 乾いた銃声が静かな夜の街に響き渡った。 標的を仕留めれば長居は無用。ノエルは黒衣を颯爽と翻し、もと来た場所へと帰っていった。 闇に溶け込む様に屋根と屋根との間を飛び去っていく。 眠った街にノエルの僅かな足音だけが響く。 しばし、跳んでいると目的地が見えてきた。もう使ってないトンネルがノエルの向かう場所だ。入口はすでに封鎖されており、辺りにはまばらな外灯が申し訳なさそうに光を放っている。 そんな不気味な様子から地元民で近づく者は誰ひとりとしていなかった。
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