2人が本棚に入れています
本棚に追加
おとうさん、おかあさん。
「威、玖。」
「威玖…。」
絵具を溢したような赤にたたずむ男の子。
威玖。
「おと、さ…、おかぁ、さん…。」
そのまま力が抜けぺたんと座り込んでしまった。
「威玖、逃げな、さ…」
「かあ、さっ、」
目の前で逃げろ、そう伝える母さんがいっそう目を見開き、
「あな、たっ!!」
と、父さんだと思われる肉の塊の側に這っていく。
「父さ…っ」
「いーくーちゃーん。」
「ひっ、」
僕は、この声を、この人を、知ってる…。
この人は、この人は僕のっ、
「いくっ、」
ぼとっ、ぼとぼと
「うっ、げぇ。かぁっさんっ!!」
「さぁ、いくちゃん。おいで?」
嫌だ、いやっ。
やだっ、やっ!!
「いやぁっ!!」
バサッ。
---pipipi----pipipi----pipipi----
「ふぇ…、ゆ、夢?」
昔の、遠い遠い昔の、夢。
「…、時間か…。」
銀色の髪をした少年はベッドから降り洗面所へ向かった。
「…、醜いかお…。」
吐き捨てるように呟き自分の顔から目をそらすように視線を外した。
そして、顔を洗いコンタクトとかつらをセットし、洗面所から出て制服に袖を通した。
そこにいたのは銀髪の少年の面影は全くない、黒い髪をした優等生だった。
「…、ひどいかお。」
いっそ顔隠そうかな。と呟き部屋から出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!