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昼休み。私はお弁当を食べ終えた後、携帯電話を握ったまま、黙って椅子に座っていた。
「せっちゃん、ぼーっとしてるけど、どうしたの?」
テーブルの向かいの席に座っている男の子が、目の前で手をひらひらと上下に振った。
「あ、伊達くん」
伊達くんは人懐こい子犬のような子だ。私のほうが年上のはずなのに、私のことを『せっちゃん』と呼ぶ。
「それがさぁ、ゆうべ変な夢見ちゃって。小説を書くコツが、『完結させること』っていう……」
「ふーん」
伊達くんにはあまり面白くなさそうな話だったな。退屈そうにまばたきしてるし。
「絶対違うよね? こんな当たり前のことが『コツ』なんて、笑っちゃうよね」
私は、あはは、とわざとらしく笑ってみたけど、彼は笑っていない。
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