小さい村の遊覧船の船長

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喫茶店に話を聞き付けた村人達が集まっていた。子ども達がライトを引っ張る。ライトが苦笑した。 「こども達に頼まれたらな……。」 学校の先生に呼ばれて、スーツを着た若い男が椅子から立ち上がった。 「ライト・フォックスさんですね。はじめまして、KOS会社の人事担当、ペータ・オブズマンです。この度、我が社で客船を運航する事に、」 「舵取は断る。」 ペータがためらう。村人達も驚いた。ライトが続ける。 「もっと有能な舵取はいるだろう?」 「でも、あなたしかいないのです! 伝説のウェイ・リバー号を操縦した…!」 「ライトがウェイ・リバー!? 伝説の豪華客船! 舵取!?」 1968年、各国の皇族達や大富豪達を乗せ、現在にも映画や本、テレビなどで幾度も語られる史上最大の世界一周船旅である。 ライトが苦い顔をする。思い出される。 床屋がライトを、微笑いながら背中を押した。 「ライトがウェイ・リバー!?」 村人達も微笑った。 「仕事さぼってこども達と遊んでいなかったでしょうね!」 「船員に迷惑ばかり掛けて!」 ペータが慌てた。 「いいんだ、金持ちの表面の会話より、みんなの本心の会話の方がいい。」
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