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月を見ながら、湖の前の芝生にペータが一人座っている。
「寝れんのか?」
「フォックスさん!」
ペータの横に向いて座り、苦笑う。
「ライトでいいよ。先はすまんかったな、感情的になってしまって。」
「そんなっ、私こそ勝手にここまで追ってきて……、」
「……船、誰が乗るんだ?」
「……あ、ウェイ・リバーと同じです。各国の皇室と富豪……それこそ遊びに過ぎません。伝説の豪華客船を再現してみたい、ただそれだけです。
……ライトさんに会うまで私も仕事をただすることだけを考え、でも実際会って、なんて愚かな私……、ライトさんにはもっと深い思いがあったかもしれないのに。」
「でも、なんで俺なんだ。確かに俺はウェイ・リバーを舵取った。しかし、もう隠居。技術やコンピュータも昔と今じゃ違うし、もっと良い舵取が本当にいると思うよ、本当に。」
「ローズ・シングさんの推薦なのです。」
「!」
ライトが目を背ける。
「……なんだ、リリー・シングの親戚か?」
「お孫さんです。」
「…リリーは乗るのか?」
ペータがライトの口調に気付いた。
「いえ お孫さんと彼女の守衛の方々です……。リリーさんは足が不自由と乗られません。」
「……、わかった、……舵取るよ、俺でよかったら……。」
「!! 本当ですか!?」
ライトが夜空を見上げた。
「勝手ですまん。」
アメリカ、ワシントン 夜の摩天楼。
高層マンションの最高階、 広いリビングでローズがソファに膝を抱えて座している。
「私、行きたくないわ。 どうせ、みんなの遊びでしょ? 学校も休むし……なんてね!」
立ち上がる。 祖母が後ろを向いて車椅子に座り、夜景を眺める。
「おばあさま、 いつも優しいもの。 行くわ!」
「ごめんねえ、ローズ。 行きたいけれどこの足では……」
「大丈夫よ、 任せて!」
夜の摩天楼が、更に輝く。
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